扉が開くその前に

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ふたりの物語 ― 出会いからこれからへ

音楽が流れ、チャペルの扉がゆっくりと開く。彼女が歩みを進める瞬間、世界が静まり返った。新郎の胸は高鳴り、震える手でただ彼女を見つめる。心の中に浮かんだ言葉は、「まさか、ここまで来るなんて…」だった。

ふたりの出会いは決してロマンチックではなかった。プロジェクトでのちょっとした言い合いや、道でぶつかってしまった偶然。初めての印象はあまり良くなかったが、運命は何度も顔を合わせる機会を与え、いつの間にか互いの存在が気になるようになった。何気ない会話、好きな食べ物の話、疲れた日の共感、小さな瞬間が重なり、自然と距離が縮まっていった。

しかし、ふたりの関係も順風満帆ではなかった。価値観の違いや忙しさからすれ違い、離れかけたこともあった。それでもどちらかが諦めずに手を差し伸べ、「まだそこにいる?」という一言が、ふたりをまた繋ぎ直した。

そしてプロポーズの瞬間は派手な演出もなく、ただ静かな週末の午後。疲れた日々も一緒に歩んでいこうと素直に伝えた言葉に、迷わず「うん」と答えた。今日、ふたりは隣に立ち、涙をこらえながらこう思う――結婚式は終わりではなく、新しい物語の始まりだと。何気ない毎日を選び続けたその決意こそ、ふたりにとっての真実の愛である。

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